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最高裁判所第二小法廷 昭和37年(オ)1400号 判決

上告人

小寺伯夫

右訴訟代理人

高橋吉久

被上告人

筒野直次郎

右訴訟代理人

南利三

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人高橋吉久の上告理由第一ないし第五点について。

原判決の、本件軍手取引契約は被上告人と椿原隆との間に締結されたものであり、尼崎厚生事業協会は社団として実在せず椿原隆の営業上の通称にすぎない旨の事実上の判断は、その挙示する証拠関係ならびにその認定した間接事実に照らして肯認しえなくはない。論旨は、原審の裁量に委ねられた証拠の取捨判断、事実認定を争い、これに所論の違法があるかの如く主張するものであつて、すべて採用しえない。

同第六点について。

ある契約が甲乙間に成立したものと主張して右契約の履行を求める訴が提起された場合に、裁判所が右契約は甲の代理人と乙との間になされたものと認定しても弁論主義に反するものとはいえない(昭和三三年七月八日最高裁判所判決、民集一二巻一一号一七四〇頁)。論旨は採用しえない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官奥野健一 裁判官山田作之助 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外)

上告代理人高橋吉久の上告理由

第一点〜第五点<省略>

第六点 原審は「田中守は椿原隆の代理人並びに本件土地の所有者沢田茂次郎の復代理人として被控訴人と本件軍手の継続的売買契約並びに右取引上の代金債権担保のため本件土地につき根抵当権設定契約および代物弁済予約を締結した」と認定したことは、弁論主義に反し、理由不備の違法がある。

一、被上告人は、椿原隆並びに沢田茂次郎との間に、直接、本件軍手の継続的売買契約並びに右取引上の代金債権を担保するため本件土地に根抵当権設定および代物弁済予約を締結したもので(訴状請求原因第一項参照)、田中守、田中京は単に紹介者に過ぎないと明確に主張し(被上告人の原審における第一準備書面第二項初めより七行目、第二準備書面第二項初めより四行目御参照)、その後もこの請求原因を維持しており、椿原隆の代理人並びに沢田茂次郎の復代理人たる田中守との間の右契約であると主張した事実はない。

二、而して、直接本人との契約か、代理人との間になされた契約か、第三者が取引に関与したけれども、それはあくまでも、当事者間の取引の紹介者の地位にとどまつたもので、直接本人間に契約が為されたかということは、上告人にとつては、その防禦方法には重大な影響があるものといわなければならない。

三、原判決が、被上告人と椿原隆の代理人並びに沢田茂次郎の復代理人たる田中守との間に本件右契約の締結がなされたと認定したことは弁論主義に反し、理由不備の違法がある。

以上いずれの論点よりするも原判決は違法であり破棄さるべきものである。

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